夏の定番!
怪談ばなし をひとつ…
むかしむかし、芳一という琵琶を弾くことがとても上手だが、目の見えない僧がおりました。
ある夜のこと。芳一の枕もとに一人の侍が現れ、芳一を大きな屋敷へ連れて行きました。
そして大勢の前で、琵琶で平家物語の弾き語りをするように命じました。
芳一は驚きながらも、見事に弾き語りました。
屋敷から帰ろうとすると、同じ侍が芳一のもとにきて、
「これから6日間、毎晩屋敷に来て琵琶を弾いてくれ」と、頼みました。
次の日の夜から同じ侍が芳一を訪ね、誘い出しました。
毎晩夜中にいなくなる芳一の行動を不審に思った仲間の僧が芳一の後をつけてみると、芳一が平家の墓の前で琵琶を弾いているではありませんか。
驚いた僧は、すぐに寺の和尚にこのことを伝えました。
和尚はこのままでは芳一が平家の亡霊に殺されてしまうと思い、芳一の体じゅうに経文を書きました。
そしてその夜のこと。また、同じ侍がやってきました。
しかし、芳一の姿が見当たりません。
いくら捜しても姿が見当たらないので帰ろうとすると、闇の中に芳一の両耳だけが宙に浮いているのを見つけました。
侍は、これだけでも持って帰ろうと、その耳をちぎり取って立ち去りました。
和尚は芳一の耳にだけ、経文を書くのを忘れていたのです。 やがて、けがが治った芳一は、また一段と琵琶の練習に励み、いつしか「耳なし芳一」と呼ばれ、ますます有名になったそうです。
おしまい。
耳なし…
…トト…
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